民間沖縄対策本部■日本の排他的経済水域を「公海」とし、自国の排他的経済水域を「領海」にする中国

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■日本の排他的経済水域を「公海」とし、自国の排他的経済水域を「領海」にする中国

■宮古島と沖縄本島の間は本当に公海か?

8日に沖縄本島と宮古島の間を中国艦隊が通過しました。外務省は「公海上で国際法上問題はない」との理由で抗議しない方針との事です。そこで、この「公海」という言葉も曖昧につかわれているので、厳密な定義を確認する必要があります。まず、日本の領海についての図を見てみましょう!

<日本の領海>

http://imagic.qee.jp/eez/eez.gif

この地図によると沖縄と宮古島の間は、「排他的経済水域」となっています。
排他的経済水域とは分かりにくい名称なのですが、どのような海域を意味しているのでしょうか?
この根拠は国連の国連海洋法条約にあります。1994年11月に発行され、日本では1996年6月に閣議で批准をしています。

【排他的経済水域の意味(海洋法に関する国際連合条約より)

・領海の基線からその外側200海里(370km)以内の海域(領海を除く)
沿岸国に経済的な管轄権が与えられているが、他国の航海に際しては自由通航となっている海域。

なお、排他的経済水域においては,以下の権利が認められています。
1.天然資源の開発等に係る主権的権利
2.人工島,設備,構築物の設置及び利用に係る管轄権
3.海洋の科学的調査に係る管轄権
4.海洋環境の保護及び保全に係る管轄権
以上

説明文の「沿岸国」を「日本」に置き換えて読むと意味を理解しやすいと思います。

(条文を確認したい方はこちらで確認できます→http://www.houko.com/00/05/H08/006.HTM#s5

これをわかりやすく説明した図が外務省のHPにありました。

<海域の概念図(外務省HPより)>

上の図で公海について注釈が「※3」で記載されています。そこの説明では、公海とは国連海洋条約の規定では排他的経済水域の外の海域のみで、航行の自由については排他的経済水域を含むとされています。公海の定義が二つあるわけです。

ということは、「公海上で国際法上問題はない」の「公海」とは「排他的経済水域」の事を意味していたということです。そうすると、中国の主張は、「他国の排他的経済水域で自由に軍事行動をしても国際法上問題が無い!」という事になります。

■他国のEEZでの軍事行動は許されるのか?

では、海洋法に関する国際連合条約では、排他的経済水域での軍事行動についてはどのように規定しているのでしょうか?

実は、全く規定が無いのです。他国の領海での軍事行動においては、沿岸国は退去をさせる事ができるのですが、排他的経済水域に関しては軍事行動に関しては規定されていません。そのため、国によって見解は異なり紛争の原因となっています。

■「中国の排他的経済水域で他国のいかなる軍事行動を許さない」と宣言した中国

実は、この見解で最も衝突しているのが米国と中国です。
下記に昨年の11月26日の新聞の記事があります。

<黄海での米韓演習反対=「EEZ内許さず」と談話―中国>
ASAHI.com 2010年11月26日21時6分
http://www.asahi.com/international/jiji/JJT201011260146.html(リンク切れ)

【北京時事】中国外務省の洪磊・副報道局長は26日、黄海での米韓軍事演習について談話を出し「いかなる国も中国の排他的経済水域(EEZ)内で許可を得ずに、いかなる軍事行動を取ることにも反対する」と表明した。EEZ内は演習が予定される海域を含んでいる。

中国では「玄関先」の黄海での米韓演習に対し、軍を中心に反発が根強い。さらに、米原子力空母の黄海派遣は「米側が『中国に対するものではない』と強調しても、受け入れられない行為」(中国筋)という。

しかし、国際社会は中国に対し、北朝鮮に対する影響力行使を求めている。演習に露骨に反対すれば、世界中から「北朝鮮擁護」と批判を浴びる。このため、自国の権益を主張できる「EEZ」を前面に出し、反対の理由付けを行ったようだ。 
[時事通信社]
(引用終わり)

■日本の排他的経済水域を「公海」とし、自国の排他的経済水域を「領海」にする中国

中国海軍は、沖縄本島と宮古島の間を公海として、自由に航行していきました。日本の排他的経済水域を「公海」とみなしているのです。太平洋側にでていって演習をしているとの事ですが、もしかしたらそこも排他的経済水域で行っているのかもしれません。つまり、中国海軍は日本の排他的経済水域で「公海」と同じように自由に軍事行動を既成事実づくりを初めているのです。

一方、上記記事にあるように「中国の排他的経済水域では許可を得ずにいかなる軍事行動をする事にも反対する。」と宣言しました。中国の排他的経済水域は、中国にとっての「領海」とみなしているのです。つまり、中国は、日本の排他的経済水域を「公海」とし、自国の排他的経済水域を「領海」にしようとしているのです。

■このまま放置すると、日本の排他的経済水域が「公海」になり、中国の排他的水域となり中国の領海になる

日本の安全保障にとって排他的経済水域の扱い方は最重要事項です。これを、安全保障音痴の外務省に任せていては日本が無くなってしまいます。中国の現在の自分勝手な主張を受け入れ、尖閣諸島で同じ理論を展開されたら、とんでも無い事になってしまいます。

シミュレーションすると次のようになります。
STEP1:日本の排他的経済水域は公海だから中国海軍は自由に航行できると主張(日本の排他的経済水域は公海)
STEP2:尖閣諸島は中国の固有の領土だから尖閣諸島を基点とした200海里水域は中国の排他的経済水域と主張(日本の排他的経済水域は中国の排他的水域)
STEP3:尖閣諸島の排他的経済水域に日米両軍の侵入を拒否(中国の排他的経済水域は領海)

尖閣諸島の排他的経済水域を主張されたら、とんでも無いことになってしまいます。200海里は約370KMですので、東シナ海のほとんどが中国の海になってしまいます。

中国の海洋覇権の戦略と手口を見抜いた上で対処していかなければなりません。国際法で明確に示されていないところを最大限に国益に沿った方向で解釈するべきです。

今後も日本最後の命綱は、草莽の国民の声しかありません。「公海上で国際法上問題はない」という罠にはまっている国民の目を覚まさなければなりません。

是非、多くの国民が気がつき、理論武装できるようこの情報の拡散のご協力をお願いします。
特に、政治家の皆様に届いて外務省、防衛省を動かしていただきたいと思います。

(仲村覚)