JSN■中国:武装艦で威嚇「拿捕の漁船解放せよ」一触即発の海

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■中国:武装艦で威嚇「拿捕の漁船解放せよ」 一触即発の海

●南シナ海は、完全に中国の海になろうとしている

「南シナ海」は、東沙諸島・西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島の「四つの諸島」があります。その「四つの諸島」を中国は制し、「南シナ海」は、今、完全に中国の海になろうとしている。

東沙諸島は、台湾が領有していますが、ベトナムが領有を主張してきた西沙諸島は、1970年から1980年代にかけて、ベトナム戦争停戦後、米軍が撤退してから中国が進出。

フィリピンが領有を主張してきた中沙諸島は、1980年代~1990年代、フィリピンから米軍基地が撤退後、中国が進出し支配。

そして、インドネシアなどが領有を主張してきた南沙諸島は、2000年~2010年、つまり現在、完全に中国が支配しようとしている。それを物語る事件が最後に引用している記事だ。

中国は、「南シナ海は中国の核心的利益」と主張しているが、「核心的利益」とは、チベットに対しても使ってきた言葉であり、中国が最終的に南シナ海を領有、支配段階に入ったことを意味している。

今回の毎日新聞の記事は、『インドネシア海軍艦船に対し、中国の白い大型漁業監視船が、「拿捕した中国漁船を解放しなければ攻撃する」と警告』と書いている。

インドネシア海軍艦船が拿捕したのは、軍事訓練を受けた海上民兵であろう。中国は、中沙諸島でも漁民を守ると称して軍艦を出し、力で支配するやり方で領有化してきたからだ。今回のインドネシアに対しても同じである。

本来日本は、今回のインドネシアの中国に対する姿勢をアジア諸国、アメリカなどに働きかけ支持しなければならない。なぜなら南シナ海は、日本のシーレーンであり経済を左右する海である。中国に南シナ海を支配されることは、日本経済が中国に支配されることを意味している。

●このままでは南シナ海で今起こったことが東シナ海・西太平洋で起こる

すでに東シナ海や西太平洋に進出し、軍事訓練を始めている中国。先日もメルマガで紹介したが、すでに東シナ海は中国漁が、常時20隻が航行する海域となり、日本漁船も近づけない現状になっている。

中国漁船に乗っているのは、漁民ではなく軍事訓練を受けた海上民兵である。漁船に警告をすれば、その漁民を守るために中国は軍艦を覇権する。

今、東シナ海へ近づく日本船は、海上保安庁が取り締まり近づけさせない。日本政府も「中国を執拗に刺激しない」、中国への「事なかれ主義政策」によって中国へ対する抗議すらしない。

(JSN副代表・ささき)


◆中国:武装艦で威嚇「拿捕の漁船解放せよ」 一触即発の海

(毎日 2010/7/27)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100727k0000m030122000c.html

青く、穏やかな南シナ海に緊張が走った。6月23日、インドネシア領ナトゥナ諸島のラウト島から北西57カイリ(約105キロ)。現場海域からの立ち退きを命じるインドネシア海軍艦船に対し、中国の白い大型漁業監視船が、「拿捕(だほ)した中国漁船を解放しなければ攻撃する」と警告。大口径の機銃が銃口を向け、インドネシア海軍艦も応戦準備に入った--。

「洋上対決」は前日、同じ海域で10隻以上の中国漁船団が操業したのが発端だ。インドネシア警備艇がうち1隻を拿捕した。「排他的経済水域(EEZ)内であり、他国は勝手に操業できない」(当局者)ためだ。だが約30分後、2隻の白い中国の漁業監視船が現れ、「インドネシアのEEZとは認めていない」と無線で主張し、解放を要求してきた。

毎日新聞が入手した現場撮影のビデオ映像によると、中国監視船のうち1隻の船首付近には漢字で「漁政311」の船名がある。軍艦を改造して昨年3月、南シナ海に投入された中国最大の漁業監視船だ。排水量は4450トン。漁業を統括する中国農業省の所属で、船体色こそ白だが、どっしりと洋上に浮かぶ姿は正に軍艦だ。

警備艇はいったん、漁船を放したが翌朝、応援のインドネシア海軍艦船の到着を待って再び拿捕した。だが中国側は、海軍艦の登場にもひるまなかった。ファイバー製の警備艇は被弾すればひとたまりもない。やむなく漁船を解放したという。中国監視船は5月15日にも拿捕漁船を解放させていた。「武装護衛艦付きの違法操業はこれが初めて」(インドネシア政府当局者)だった。

同じ南シナ海で、中国は、西沙(英語名パラセル)諸島や南沙(同スプラトリー)諸島でベトナムやフィリピンと領有権を巡って衝突してきた。台湾の海軍関係者は「ナトゥナの北に豊かな海底油田がある」といい、中国の狙いが水産資源より地下資源獲得である可能性を示した。

「南シナ海は中国の核心的利益」--。今年4月の米紙ニューヨーク・タイムズによると、オバマ米政権のベーダー国家安全保障会議アジア上級部長とスタインバーグ国務副長官が3月に中国を訪問した際、中国側がそう説明した。「台湾」と「チベット・新疆ウイグル両自治区」について中国が使ってきた言葉で南シナ海が語られたのは初めてだった。

この海は、中国にとって安全保障と資源確保をかけた“生命線”なのだ。

6月22日の事件について中国国営の新華社通信は「南沙諸島付近の海域で中国漁船と乗組員9人が拿捕され、交渉の末に解放された」と報じた。翌日のインドネシア海軍との対峙(たいじ)には触れなかった。

事件の真相について毎日新聞が中国外務省に照会したところ、秦剛副報道局長は、「中国は南沙諸島及びその付近の海域に議論の余地のない主権を有している。関係国と友好的な協議と交渉を通じて争いを適切に処理し、南シナ海地区の平和と安定を願っている」と書面で回答した。

インドネシア駐在の西側外交官は「既成事実を重ね、武力をちらつかせて海域を押さえるような手法が地域の安定に資するとは思えない」と話した。

大国・中国との経済関係などを優先するインドネシア側は事件を一切公表していない。だが、ユドヨノ大統領は今月22日の閣議で、「南シナ海に新たな緊張がある。ナトゥナ諸島はこの海域に近い」と、いささか唐突に「ナトゥナ」の名を挙げて懸念を示した。

第二次大戦後、「七つの海」を支配してきたといわれる米国。だが、中国が新たな海洋国家として台頭してきた。その実態と背景を検証し、日本のあるべき安全保障を考える。

【ことば】南沙(スプラトリー)諸島 南シナ海の100以上の島と無数の浅瀬や礁からなる。第二次大戦中は日本が占領した。太平洋からインド洋へ抜ける要衝であり、水産・石油資源が豊か。中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾、ブルネイが領有を争っている。