八重山日報(平成31年元日号)【寄稿論文】「県民投票の本当の目的は辺野古阻止ではなく、琉球独立」

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八重山日報(平成31年元日号)【寄稿論文】「県民投票の本当の目的は辺野古阻止ではなく、琉球独立」

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八重山日報(平成31年元日号)【寄稿論文】「県民投票の本当の目的は辺野古阻止ではなく、琉球独立」

■不自然で強引な県民投票

昨年10月26日、沖縄県議会で、辺野古移設の賛否を問う県民投票条例が可決され、10月31日に交付、その後沖縄県庁に県民投票推進課が設置され、今年2月14日に公示、24日に投開票が行われる予定です。しかし、市町村議会から、反対の意見書や事務予算の削除された予算案の可決が続いています。それは、「賛成か反対の二者択一では複雑な県民の多様な意見を反映出来ない。」「原点の普天間飛行場の危険性が条例に見えない。」「民意については昨年の知事選挙で結果がでているのに膨大な予算をかけてやる必要がない。」というのが主な理由です。この拙文が新聞に掲載される頃には、次々と反対の意見書が可決されたり、予算が凍結されたりして、県民投票の意味が疑われるようになっていることでしょう。しかし、私は県民投票が中止にされることは無いと見ています。何故なら、オール沖縄勢力の本当の目的は違うところにあるからです。その影は県民投票条例が決まるまでの不自然な強引さにあらわれています。まず、県議会で「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた四択の自民党の修正案を完全に無視して強引に二者択一にしたことです。次に、沖縄県が一部の市町村で実施されないとしても意義があるという立場を示しているということです。本来、複雑な県民の意思を汲み取るためには、県民の立場に立った様々な質問を提示し、すべての自治体で行われることが大前提であるべきです。特に移設元の宜野湾市民の意見は最も大切にするべきものです。しかし、それを無視したため、当の宜野湾市では反対意見書が可決されたのです。既に、県民投票の体をなしていないのです。

■自らを日本人だと思い込んでしまった可哀想な琉球人

では、オール沖縄の県民投票を実施する目的はどこにあるのでしょうか?それは、即理解することは難しいのですが、沖縄では先住民族差別を受けているということを国連に主張したり、国際発信する材料づくりにあるのです。まず、昨年八月三十一日の琉球新報の一面に掲載された「国連、沖縄保護を勧告 基地集中は人種差別」というタイトルの記事を御覧ください。

«国連人種差別撤廃委員会は三〇日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告した。米軍基地に起因する米軍機事故や女性に対する暴力について「沖縄の人々が直面している課題」と懸念を示した。その上で「女性を含む沖縄の人々の安全を守る対策を取る」「加害者が適切に告発、訴追されることを保証する」ことなどを求めた。同委員会が勧告で、差別の根拠として米軍基地問題を挙げたのは2010年以来。(以下省略)【『琉球新報』平成三十年八月三十一日付】»

このニュースは沖縄の基地問題より何百倍も大きな大事件です。ほとんどの沖縄県民は日本人として生きてきたにもかかわらず、国連は日本政府に先住民族として認めるべきだとの勧告を出したからです。筆者は、この勧告を撤回させるために、8月16日から2日間開催された国連人種差別撤廃委員会の対日審査に合わせてジュネーブに飛び、審査直前の非公式会合で英語にてスピーチを行いました。その日本語訳をご紹介します。

 私は日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚です。日本国沖縄県に生まれ育った者の代表として発言させていただきます。
まず、沖縄県に生まれ育ったすべての人々は、日本人として生まれ、日本語で会話をし、日本語で勉強し、日本語で仕事をしてきました。ゆめゆめ日本の少数民族などと意識したことはありません。沖縄は第2次大戦後、米軍の占領支配下におかれましたが、沖縄では激しい祖国日本への復帰運動が起こり、わずか27年後には沖縄は日本に返還されました。
祖国復帰運動の最大の情熱の根源は、沖縄の子供たちに日本人としての教育を施したいということでした。沖縄は日本の中では複雑な歴史を持つ地域ですが、一度たりとも日本からの独立運動が起きたことはありません。独立を公約として立候補して当選した政治家も一人もいません。
また、過去一度たりとも、沖縄から先住民族として認めるよう保護してくれという声があがったことはありません。議会で議論すらされたことはありません。沖縄で独立を標榜(ひょうぼう)する団体がありますが、それは沖縄ではごく少数の団体です。
委員会は、数百人の意見を根拠に、140万人の運命を決する判断をしたようなものです。日本人である沖縄県民に先住民族勧告を出すことは、国際社会に誤解を与え、沖縄県民に対する無用な差別や人権侵害を生み出すことになります。それは、委員会の存在意義に反します。早急に撤回すると同時に、同じ過ちを繰り返さないように、なぜ誤認識したのか原因を調査し、再発防止策を講じるようお願い致します。

上記のスピーチににもかかわらず、冒頭で紹介した新聞記事のように5回目の勧告がだされてしまったのです。日本国内でも当事者である沖縄でもほとんど知られていませんが、国連では「沖縄県民は先住民族だという認識がほぼ固まっている」というのが実態なのです。では、国連で自らを日本人として訴えた私を人種差別撤廃委員会の委員たちはどのようにみたのでしょうか?

彼らは私を明治時代に日本に強制併合されて以来の、日本への同化政策の結果、独自の言語やアイデンティティーを失い、自らを日本人だと思い込んでしまった可哀想な琉球人だと認識したのです。天地がひっくり返るぐらい、沖縄の認識が狂ってしまったのです。こうなってしまったのは、裏でコソコソ隠れて、「沖縄の人々は日本に植民地支配されている先住民族であり、日本政府はその権利を守るべきだ」と訴え続けた勢力がいたからです。実際、当日もその勢力に属する人物が姿を見せていました。その人物が8月17日付の琉球新報の26面に小さく掲載されていました。

「糸数氏基地問題は差別 国連対日審査で訴え」

国連人種差別撤廃委員会の対日審査が16日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で始まった。審査に先立ち、沖縄から糸数慶子参院議員がスピーチした。糸数氏は沖縄の人々に対する差別の事例として、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設をはじめとする基地問題をあげた。日本政府に差別的な政策をやめさせ、先住民族としての権利を守らせるよう訴えた。(以下省略、『琉球新報』2018年8月17日付)

■全ての活動は「琉球人差別」の火種をつくるため

本来、国連の人種差別撤廃委員会とは、チベットやウィグルのように、政府に対して発言や関与する権利を全く持つこと無く弾圧されている少数民族の駆け込み寺です。政府に働きかけることができないからこそ、国連に助けてもらう仕組みです。ところが、沖縄の政治に関与どころか、参議院議員に選挙で当選することもでき、国政に関与できる立場でありながら、更に政府には、先住民族の権利を一度も要求したこともないのに、何故か何度もジュネーブやニューヨークに足を運んで国連の人権関係の委員会に参加し、同様の発言を繰り返し、沖縄の基地問題を国際的な人種差別問題にエスカレートさせてきたのです。そのため、沖縄県民を先住民族と断定した勧告は、二〇〇八年の自由権規約委員会以来五回にものぼります。

今回の審査で沖縄県民を先住民族だとする報告書を作成したのは、沖縄国際人権法研究会(島袋純、星野英一共同代表)と琉球弧の先住民族会(当間嗣清代表代行)の二団体だ。前者の沖縄国際人権法研究会の英語の名称は、「All Okinawa Council for Human Rights」であり、共同代表の一人の島袋純氏は、翁長知事が国連人権理事会でスピーチを行った時、オール沖縄の国連部長という役職で、その実現を担った人物です。つまり、沖縄国際人権法研究会は、「イデオロギーではなくアイデンティティー」をスローガンに故翁長雄志を担いで、辺野古移設阻止を戦い続けてきたオール沖縄の国連担当部署なのです。

オール沖縄内部の辺野古埋立承認撤回要求は強く、新しい知事の当選を待つこと無く、副知事の代行により撤回してしまいました。このように敗訴覚悟で無謀な戦いを選ぶオール沖縄の真意は、沖縄と日本政府の対立構図を構築し、沖縄が政府から差別を受けていると国際発信する火種をつくることにあるのです。敗訴した際には「承認撤回を求めた琉球人の民族の自決権は日本の法廷でも無視された」と国連に訴え、国連が認めている「先住民族の土地の権利を保護しなければならない」というルールにより米軍基地を撤去の国際世論をつくるとが目的なのです。

オール沖縄の動きは、全てこの先住民族の土地の権利を利用した米軍基地撤去へのシナリオに沿って進められているのです。そして、2月24日実施予定の県民投票は、県知事選挙に次ぐ「琉球人」VS「日本政府」の対立構図をつくる最大の政治イベントです。これも、「琉球人差別」の火種をつくり、国連に報告する大きな材料となるのです。だからこそ、一部の県民の意思を無視してでも、歯抜けの県民投票になろうが、(先住民族である琉球の人々の)辺野古埋立反対の民意を強引に作り上げようと動いているのです。結局、県民のための県民投票ではなく、逆に沖縄県民を騙して先住民族に貶めるための県民投票なのです。

■「安保闘争」から「反差別闘争へ」

さて、ここで私達が気をつけなければならないことがあります。沖縄の米軍基地撤去運動は、かつての安保闘争から、沖縄県民は日本政府から差別をうけていると国連に訴える「反差別闘争」にシフトしているということです。八月二九日、立憲民主党の沖縄県連設立を受けて、那覇市内で記者会見を行った枝野幸男氏は、「辺野古に基地を作らせない」「普天間の返還をさせる」に合わせて、「日米安全保障体制を堅持」を方針として掲げました。これまでの非武装平和の左翼運動ではなく、日米安保を認めた保守を偽装した左翼運動になっているのです。

これには、すでに巧みな罠が仕掛けられています。それは、沖縄の米軍基地を全国で引き取る運動であり、「日米安全保障体制は重要だ。しかし、沖縄にばかり基地負担をかけているので、公平にするため全国で引き取ろう」という考えです。これは、全国各地で運動が始まっており、日米同盟を重要視する自民党系の首長も賛同してしまいそうな主張とも思えます。しかし、訓練移転は実現できても、実際に沖縄の基地負担を大幅に減らす移設を実現する可能性はゼロなのです。 仮に受け入れ先の自治体が現れたとしても今度は、共産党などの組織が受け入れ先の自治体に集結して基地反対の活動を起こして、失敗させ、琉球新報や沖縄タイムスに「沖縄差別!」という大きな見出しが掲載されることになるだけです。また、どこの自治体も受け入れを表明しなくても「沖縄はやはり差別されている」として、国連に報告する具体的な材料が増えるだけなのです。

■これから始まる「沖縄ヘイト」という反差別闘争

もう一つ、新たな「沖縄差別運動」が始まろうとしています。前述した立憲民主党の沖縄県連が設立され、その県連会長に反ヘイトスピーチ運動の先頭を走ってきた参院議員、有田芳生氏が就任しました。彼は、参院議員の糸数慶子氏がジュネーブの国連人種差別撤廃委員会に参加した際も会場で常に隣りに座っていました。この2人は、反ヘイトスピーチ運動と沖縄の米軍基地問題という、一見異なる領域で活動しているように見えますが、実態は「反差別闘争」という日本解体運動をともに戦う同志でもあるのです。有田氏を県連会長に送り込んだ立憲民主党の狙いは、国連勧告を錦の御旗にして、沖縄発の反基地運動、独立運動に対して、全ての批判をヘイトスピーチという名のもとに言論封鎖するためなのです。例えば、ある政治家や言論人が「沖縄県民は日本人ですから独立なんてバカなことを言わないでください」という発言すると、「琉球人の尊厳を踏みにじった! ヘイトだ!」として言論弾圧を始めるのです。そして、それに対してある大臣や官僚が国会で「沖縄の人々は先住民族ではないからヘイトスピーチに該当しません」と答弁すると、有田氏は「ご存知ですか?国連では既に過去5回、沖縄県民を先住民族だとして認めるべきだという勧告を出しています。」「これ以上、拒否し続けると、日本は世界に対して非人道国家だということを晒してしまうことになるのですよ。」というような発言をすることが予想されます。要するに、当事者である沖縄県民の意思と全く関係ないところで、沖縄県民が先住民族だというプロパガンダが国連を中心に広がり、それを否定するような発言に対しても言葉狩りが始まり、誰も止めることができなくなるような体制づくりが進められているのです。この延長線上には、「琉球は古来より中華民族の一員」だとか「中華琉球民族」という言葉を使い始めた、中華人民共和国の自治区になり、ウィグルやチベットのような悲惨な未来が待っているのです。それに続いて、生命線を失った日本全体も同じ道を歩むことになってしまうのです。

■唯一の解決策、沖縄から先住民族勧告撤回の声を!

この悲惨な未来を回避できるのは、沖縄県民以外にありません。沖縄県民が先住民族勧告撤回の声を上げることです。まず必要なのは、現在県民投票で行われているように、各市町村自治体で国連の沖縄県民を先住民族だとする勧告の撤回を求める意見書を可決することです。それは、特にこの論文を読んでくださっている市町村議会議員の皆様の双肩にかかっています。そして、その意見書では、日本政府や国連に勧告撤回を要求し、また、「沖縄では先住民族について議論したことは無い。」と県議会で答弁した玉城デニー知事には、撤回の先頭に立ってもらう必要があるので、意見書の提出先に沖縄県知事も加えていただきたいと思います。もし、それを断り、糸数慶子等の国連へのロビー活動を黙認した場合は、県民を騙して先住民族に貶める工作に加担したくことです。其の場合は、この悪事を全県民に伝え、責任をとって辞任してもらいましょう。そして、4月の衆議院選挙の補欠選挙、7月の参議院選挙では辺野古移設が争点ではなく、沖縄県民が日本人か先住民族かを争点に選挙を戦うべきです。特に参議院選挙では、糸数慶子氏が出馬する可能性が高いので、彼女には、しっかりと「日本政府に沖縄県民を先住民族として公式と認めさせる」と堂々と公約に掲げていただきたいものです。もし、そうでなければ、これまでの国連での活動は公約違反ということになります。辺野古移設は一部の県民しか直接影響を受けませんが、先住民族かどうかは、沖縄本島の辺戸岬から喜屋武岬まで、そして石垣島、宮古島、与那国島、そして全ての離島に住む県民、県外、国外に住む沖縄県出身者が直接関係する重要なテーマです。結果の可否以前に、民主主義的な手続的観点から見ても県民の議論無くして国連での発信を許してはなりません。オール沖縄の皆様が主張する「沖縄のことは沖縄で決める沖縄の自己決定権」にも反しています。

更に、同時に、沖縄県民が決して先住民族では無いということを自信をもって発信できるようにするためには、今沖縄で溢れている、「日本とは異なる独立国だった琉球王国が明治政府に滅ぼされた」という「琉球処分史観」を私達の頭の中から払拭しなければなりません。それについては、拙著、「沖縄はいつから日本なのか」(ハート出版)に正しい「日本の中の沖縄史」をまとめたのでそれを多くの沖縄県民にご一読いただきたいと思います。また、戦後米軍統治下にあった沖縄のリーダーがどのように日本人としての矜持を持って、命がけで祖国復帰運動を展開したかについては、八重山日報で連載中ですので、引き続きご購読いただきたいと思います。先人の恩を忘れては、正しい沖縄の未来の進路を選ぶ取ることは不可能なのです。