準優勝弁論:小西沙紀(こにし・さき)25歳「沖縄を守る日本人が 忘れてはいけないこと」

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準優勝弁論:小西沙紀(こにし・さき)25歳「沖縄を守る日本人が 忘れてはいけないこと」

まず始めに、私の出身は沖縄ではありません。正直に言うと、沖縄についてもあまり知らない方だと思います。

しかし、私は紛争地のパレスチナに行った経験があります。この経験から、皆さんに何か感じてもらえればと思い、今ここに立たせていただいています。

私がパレスチナに行ったのは、アラビア語を学ぶためにパレスチナに留学していた親友がきっかけでした。ちょうど海外旅行に行こうと思っていた私はパレスチナを行き先に選び、一昨年の2 月に 1 週間滞在することになりました。

私は、パレスチナにてこのような経験をしました。

親友と一緒に夕飯を食べている時にすぐ近くで、ドン!と銃声の音が鳴り響きました。一瞬何が起こったのか分かりませんでした。大きな銃声がその後も何度か鳴り響き、男性の怒鳴り声と救急車の音が遠くで聞こえました。私はその日生まれて初めて、死の恐怖で震えながら寝ました。次の日になってもその出来事はニュースにもならず、軍事練習だったという噂が流れるのみでした。

結局、あの銃声は何だったのか、その真相はいまだに謎に包まれています。

皆さんは日本で街中を歩いている時、「銃を向けられるのでは」、「殺されるのでは」など考えたことがありますか?恐らくないのではないでしょうか。

パレスチナと対立しているイスラエルの国境には壁があります。その壁には、さまざまな意味を含んだ落書きが描かれています。例えば、パレスチナの国旗を掲げ自由を求めるパレスチナ人の絵。その隣には、銃をパレスチナ人に向けるイスラエル兵士の絵。

また、別の場所には、平和を象徴する鳩の絵があるのですが、その鳩は防弾チョッキを着せられ、その胸には銃口が向けられていることを意味する赤いレーザーサイトが描かれているのです。壁の近辺にはイスラエル兵士が銃を持ち、パレスチナ人を見張っています。

少しでも壁を壊そうとしたり乗り越えようとしたりするものなら、射殺されてしまうことでしょう。パレスチナ人にとって日常は常に死と隣り合わせなのです。

皆さんはお金さえあれば海外旅行に行くことは難しくないですよね?パレスチナ人にはそれができません。対立しているイスラエルの目があるためです。私はパレスチナの大学で、日本語を勉強している大学生に会いました。彼らは一生懸命ひらがなや漢字を学んでいました。

彼らは日本に旅行に行きたくても行けません。日本人が当たり前にできることが彼らにはできないのです。

また、皆さんは普段手帳を持ち歩き、1ヶ月先の予定も当たり前のように決めると思います。

しかし、パレスチナ人は手帳なんか持ちません。決めるのは今日や明日の予定だけ。いつイスラエルにまた占領され殺されるか分からない。「自分には明日が来ないかもしれない」と潜在的に思っているのかもしれません。

このような環境にいるパレスチナ人が、「基地があるから戦争が起こるんだ」なんて言うと思いますか?平和ボケしている日本人だからそのような声が上がるのです。

安全が保障されていて教育も自由に受けられる。日本人がこんなに裕福に暮らせるのは戦争で戦ってくれた先人たちがいたからです。大東亜戦争では沖縄も戦場となりました。沖縄で戦ってくださった兵士の方々、沖縄県民の方々は、想像を絶する恐怖を感じたことでしょう。

戦後壊滅状態だった、復興不可能だと思われた日本がここまで裕福な国になったのは、私達の先祖が経済の発展のために努力をし、日本人としての道徳心を受け継いできてくださったからです。

沖縄が祖国復帰できたのも、佐藤栄作さんや仲村俊子さんを始め、当時の先輩方が活躍してくださったからです。

私はパレスチナに行って、今自分が当たり前だと思っていることが、当たり前ではないということを知りました。だから何事にも感謝をしようと思えるようになりました。今私たちが自由に学べていること、色んな国に行けること、娯楽があることは当たり前ではないのです。

私のやりたいことは、この事実を、感じたことを周りに発信し、少しでも皆さんが今の生活に感謝をしたり問題意識を持ったりするきっかけを生むことです。大学生の時に地元のコミュニティカフェという地域の集いの場で中学生に勉強を教えていました。今後、そこで機会を作り、沖縄やパレスチナのことを発信していこうと考えています。また、考えを文章にして広く発信もしていきたいと思います。そして今ここで、パレスチナの問題と沖縄を繋げて話しているのも、パレスチナという土地で銃声を聞き、貴重な経験をした私だからこそ発信するのだという使命を持っているからです。こういった活動を通し、日本人としての誇りを持ち、先人たちの想いを受け継ぐ人たちを増やしていきます。