【iRONNA掲載論文】〜「オール沖縄」は「オール先住民族」だ!〜沖縄知事選挙は反差別の理不尽と戦う「日本解体闘争」

シェアする

 平成30年8月31日の琉球新報1面に「沖縄への基地集中は『人種差別』国連が日本政府に勧告」というタイトルで次の記事が掲載された。

 国連人種差別撤廃委員会は30日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告した。米軍基地に起因する米軍機事故や女性に対する暴力について「沖縄の人々が直面している課題」と懸念を示した。その上で「女性を含む沖縄の人々の安全を守る対策を取る」「加害者が適切に告発、訴追されることを保証する」ことなどを求めた。同委員会が勧告で、差別の根拠として米軍基地問題を挙げたのは2010年以来。(以下省略)

 前回の寄稿「沖縄の基地集中は『人種差別』危険な国連勧告の裏側を読む」では、筆者がスイス・ジュネーブまで足を運び、国連人種差別撤廃委員会の対日審査に先立ち、「沖縄県民は先住民族としての自己認識を持っておらず、日本人である」とスピーチしたことを報告したが、それを全く無視し、このような勧告が出されたのだ。沖縄県民を先住民族と断定した勧告は、2008年の自由権規約委員会以来、これで5回目である。
 さて、前知事の翁長雄志氏急逝に伴い9月30日に投開票が行われる沖縄県知事選で、翁長氏を支援してきた「オール沖縄」は、後継候補として自由党幹事長の玉城デニー前衆院議員の擁立を決めた。オール沖縄は「イデオロギーではなくアイデンティティー」をスローガンにして米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止を掲げてきた。
 このスローガンは、基地問題が保革の対立問題ではなく、国際的人種差別問題にエスカレートさせる一つの罠(わな)であり、玉城氏もこのスローガンを引き継いでいる。沖縄県民が全く望まないのに、国連で先住民族と認識されるからくりと、その目的が米軍基地撤去であることについては、すでに「沖縄・翁長知事の国連演説は本当にヤバい」(月刊正論2015年10月号)で述べたので詳細は、そちらを参照いただきたい。
沖縄知事選で支持を呼び掛ける玉城デニー氏=2018年9月13日
沖縄知事選で支持を呼び掛ける玉城デニー氏=2018年9月13日
 ここで、先住民族勧告に関する沖縄選出の国会議員全員の姿勢が明らかになった報道を紹介したい。まず、平成28年4月27日、国連の各委員会による先住民族勧告を問題視した沖縄選出の宮崎政久衆院議員が内閣委員会の質疑で勧告の撤回を働きかけるよう政府に求めた。
 これに対し、木原誠二外務副大臣は「事実上の撤回、修正を働きかけたい」と答弁し、それを問題視した琉球新報は、翌日の新聞1面で取り上げ、別稿記事で沖縄選出の全ての衆参両議員に賛否を問うアンケートの結果を掲載した。
 それによると、自民党所属議員5人と、おおさか維新の儀間光男議員は「沖縄県民は日本人であり勧告は不適切だ」との主旨の回答をした。また、おおさか維新の下地幹郎議員は「政治家の領分ではない」と判断を回避。問題のオール沖縄の議員5人は、「勧告は人権を尊重したもの」や「その撤回は侮辱」などと勧告を評価、肯定する主旨の回答をした。そして玉城氏も「差別を否定する勧告は政府も尊重すべき」と答えたのである。
 沖縄では差別とか自己決定権という言葉で覆い隠してはいるが、結局のところ、オール沖縄とは「オール先住民族」だったのである。つまり、現在行われている知事選は辺野古移設阻止を問う選挙ではなく、沖縄県民はこれまでのように日本人として生きていくか、日本のマイノリティーである先住民族として生きていくのか、を問う選挙なのである。
沖縄の米軍基地撤去運動は「安保闘争」から国連を利用した「沖縄反差別闘争」にシフトしていることも前回の寄稿で説明した。先住民族の権利を利用して米軍基地を撤去する方向に動いているのだ。今さら驚く必要もないが、琉球新報は8月30日の国連勧告を重要視し、9月3日の社説でも以下のように取り上げている。

「国連の沖縄基地勧告 政府は差別政策改めよ」

過重な米軍基地負担によって県民が差別的処遇を受けていることを国際社会が認めた。国連人種差別撤廃委員会が、米軍基地の沖縄集中を差別の根拠として挙げ、沖縄の人々の権利を保護するよう日本政府に勧告した。勧告に法的拘束力はないが、実情を真摯(しんし)に受け止め沖縄に寄り添った内容だ。世界標準で見ても、政府の新基地強行がいかに理不尽であるかが改めて浮き彫りになった。政府は勧告を受け入れ、直ちに辺野古の新基地建設を断念し、沖縄に対する差別政策を改めるべきだ。(以下省略)

 その後の内容も社説というよりは、被差別意識をあおるような言葉が続く。

◎「戦後70年余も米軍基地に反対し続けてきた沖縄の訴えには一切耳を貸さず、本土の『民意』にはすぐに理解を示す。これを差別と言わずして何と言おう」

◎「日本政府は勧告を受け入れてはいない。むしろ逆に、沖縄に対する圧政の度合いを強めている」

◎「政府は国際社会の指摘に頰かむりせず、きちんと向き合うべきだ。県民の人権、自己決定権を踏みにじることは許されない」

 筆者は、多くの沖縄県民がこの社説のように思っているとは思わない。また、先住民族の権利を理解しているとも思わない。問題は、この社説が沖縄県民の代弁として国際発信されることだ。筆者は、国連の人種差別撤廃委員会で休憩時間中に日本語で書かれた琉球新報を広げて読んでいる委員を見た。彼は委員会でもたどたどしい日本語でスピーチするなど非常に日本に好意を持っている人物である。しかし、琉球新報に書かれていることが「沖縄県民の世論だ」と勘違いしていることは間違いない。
 一方、沖縄反差別闘争の特徴に日米同盟容認があることも述べたが、それを裏付ける動きがあった。8月29日、立憲民主党の沖縄県連設立を受けて、那覇市内で記者会見を行った枝野幸男氏は「辺野古に基地を作らせない」「普天間を返還させる」とした上で、「日米安全保障体制の堅持」を方針として掲げた。
 これには、すでに巧みな罠が仕掛けられている。それは、沖縄の米軍基地を全国で引き取る運動だ。言い換えれば「日米安全保障体制は重要だ。しかし、沖縄にばかり基地負担をかけているので、公平にするため全国で引き取ろう」という考えである。
 これは、日米同盟を重要視する自民党系の首長も賛同してしまいそうな主張とも思える。だが、訓練移転は実現できても、実際に沖縄の基地負担を大幅に減らす移設を実現する可能性はゼロだ。なぜなら、これまでの日米両政府の合意を覆すことであり、交渉を振り出しに戻すようなものだからである。
 仮に合意したとしても今度は、受け入れ先の自治体が基地反対の活動を起こして、失敗させることを目論んでいる可能性があるからだ。結局、基地引き取りに失敗して、琉球新報や沖縄タイムスに「沖縄差別!」という大きな見出しが掲載されることになり、国連に報告する具体的な材料が増えるだけだ。
 もう一つ、新たな「沖縄差別運動」が始まろうとしている。前述した立憲民主党の沖縄県連が設立され、その県連会長に反ヘイトスピーチ運動の先頭を走ってきた参院議員、有田芳生氏が就任した。彼は、参院議員の糸数慶子氏がジュネーブの国連人種差別撤廃委員会に参加した際も会場で常に隣りに座っていた。この2人は、反ヘイトスピーチ運動と沖縄の米軍基地問題という、一見異なる領域で活動しているように見えるが、実態は「反差別闘争」という日本解体運動をともに戦う同志でもある。
国連人種差別撤廃委員会の対日審査会合後、記者会見する参院議員の有田芳生氏(右)と糸数慶子氏=ジュネーブ
国連人種差別撤廃委員会の対日審査会合後、記者会見する参院議員の有田芳生氏(右)と糸数慶子氏=ジュネーブ
 有田氏を県連会長に送り込んだ立憲民主党の狙いは、国連勧告を錦の御旗にして、沖縄発の反基地運動、独立運動に対して、全ての批判をヘイトスピーチとして阻止するためではないだろうか。
 それを許してしまうと、「沖縄県民は日本人ですから独立なんてバカなことを言わないでください」という発言も、「琉球人の尊厳を踏みにじった! ヘイトだ!」とされてしまうことになる。要するに、沖縄の反日反米闘争批判の「言葉狩り」がこれから始まるのである。
 このように、反差別闘争とは偽装マイノリティーの力を最大化し、マジョリティー(日本人)の発言を封印する日本解体闘争なのである。政府も国民も早急に沖縄反差別闘争に備えなければならない。

関連投稿

シェアする