【連載】◇中国空軍の第二列島線制覇巡航◇第1回「石垣市議会で見送られた尖閣諸島の字名変更」

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■石垣市議会で見送られた尖閣諸島の字名変更

平成二十九年十二月四日、第八回石垣市議会定例会が始まった。筆者は急いで、石垣市議会のホームページを開き、提出議案概要をチェックした。日本が尖閣諸島をを実効支配していることを国際社会に示す、画期的な議案が上程されているはずだからだ。

それは、尖閣諸島の現在の地名である「登野城(とのしろ)」から「尖閣」という文字を入れた名称に変更するというものだ。しかし、提出議案を隅から隅まで読んでも、その議案は出ていない。そこで、知人の石垣市議会議員に電話をし、どうなっているのか聞いたら「政府のほうからストップがかかったらしい。」とのことだった。非常に残念な話である。

この議案は平成二十七年九月に本籍を尖閣諸島に移した、南西諸島安全保障研究所の奥茂治氏が字名変更の陳情を提出し、翌年から市議会でも審議されていた。そして、平成二十九年九月議会では仲間均市議(「尖閣諸島を守る会」代表世話人)が、「『尖閣』という文言を地名に入れることで、国内外に石垣市の行政区域であることを知らしめて欲しい」と要望し、中山市長は、十二月議会には必ず議案を上程し、住所にしっかり「『尖閣』という言葉が入るようにしたい」と名言していた。しかし、期待された十二月議会が開催された十二月四日、その議案が上程されなかったのだ。

その日の夜十九時、産経新聞ネット版が中国外務省の記者会見での尖閣をめぐる発言を報道した。

《北京=西見由章】中国外務省の耿爽報道官は4日の記者会見で、沖縄県石垣市が尖閣諸島の字名を「登野城尖閣」に変更する方針を決めたことについて「日本側がどのようないんちきをやろうと、釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)が中国に属している事実を変えることはできない」と反発した。耿氏は「釣魚島とその付属島嶼は古来、中国の固有の領土であり、中国側が領土主権を守る決意は揺るぎない」と主張。「われわれは日本が歴史と現実を正視し、この問題で騒動を引き起こすのを止め、両国関係改善の勢いを損なわないよう求める」と述べた。》

■突如進展をはじめた日中空海危機管理の連絡メカニズム

更に二日後の十二月六日、尖閣に関係する重大なニュースが報道された。「尖閣衝突回避策で大筋合意 日中、連絡体制運用へ」というタイトルで共同通信が配信したニュースだ。冒頭の文章を引用する。

《日中両政府が、沖縄県・尖閣諸島などを巡る東シナ海での偶発的衝突を回避する「海空連絡メカニズム」設置案について、上海で開いた「高級事務レベル海洋協議」で大筋合意したことが6日、分かった。近く正式に運用を開始する見通し。複数の日中関係筋が明らかにした。》

『海空連絡メカニズム』とは、自衛隊と中国軍が尖閣諸島等で遭遇した場合、突発的な紛争が起きることを回避するため艦船や航空機が直接連絡を取り合う方法を事前に定めたり、防衛当局幹部のホットラインを設けたりする仕組みのことだ。日本は平成五年にロシアと海上事故防止協定を結び、航空機の無線周波数を統一している。

報道記事は続いて日中両国の関係改善が加速することを説明し、以下の補足で締めくくっている。《これまでの協議で日本側は、中国側が連絡さえすれば尖閣周辺に侵入可能と解釈しかねないとして、領空、領海は運用範囲に含まれないと主張中国側は尖閣への領有権主張を強めるため、運用範囲を明確にしないよう求めていた。

この記事では、日中間で対立した運用の適用範囲について日本側が折れたのか中国側が折れたのかがわからない。しかし、翌日の産経新聞が共同通信の配信を受けて次のように報じていた。

《両国は今年秋ごろから、外務、防衛当局が水面下で協議。一二月五、六両日に上海で開いた高級事務レベル海洋協議で、地理的な運用範囲については触れない内容で折り合った。両国の法的な立場を害さないとの原則も確認したもようだ。》

結局、日本側が折れていたようだ。

石垣市議会が始まった日の中国外務省の反発声明、そして、その翌日から二日間上海で開催された事務レベル海洋協議での突然の「海空連絡メカニズム」設置案の大筋合意。これらのタイミングを見ると、中山市長の議案上程の先送りととても無関係とは思えない。もし、石垣市が予定通り字名変更を決議していたら、連絡メカニズムの協議は紛糾して何も決まらなかっただろう

続く

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