沖縄対策本部長■1・14台湾総統選挙と反国家分裂法(下)

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中国側が両岸関係を推進する根拠となっているのが、中国政府が2005年3月14日に施行した「反国家分裂法」です。

<PDF版 反国家分裂法(全条文日本語訳)>
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B9TqZd5_2FaCMDQ4NjU1ODctZWI4Mi00NzlmLTk3MzctZTY1MTgzNWI2Yjkw&hl=ja

<反国家分裂法 第1条>

「台湾独立」を掲げる分裂勢力による国家分裂への反対・抑制、祖国の平和統一の促進、台湾海峡地域の平和・安定の保護、国家主権と領土保全の保護、中華民族の根本的利益の保護のため、憲法に基づいて本法を制定する。

このように、いきなり「台湾独立派」を分裂勢力と決めつけています。

両岸関係の具体的な内容については第6条に書かれています。

<反国家分裂法 第6条>

国は次のような措置をとり、台湾海峡地域の平和と安定を保護し、両岸の関係を発展させていく。

(1)両岸の住民の往来を奨励、促進し、理解と相互信頼を深める。

(2)両岸の経済面での交流と協力、直接の通信・通航・通商、両岸の経済関係の緊密化、互恵と利益共有を奨励、促進する。

(3)両岸の教育・科学技術・文化・衛生・体育での交流を奨励、促進し、中華文化の優れた伝統をともに発揚する。

(4)両岸による犯罪の共同取締りの奨励・推進。

(5)台湾海峡地域の平和と安定の保護や、両岸関係の発展に役立つその他の活動の奨励・推進。

中国政府は、2005年にこのような両岸政策(つまり台湾政策)に関する法律をつくっていたのです。

そして、馬英九は両岸関係の改善を公約にして総裁選挙に出馬し、2008年12月15日には中国との間で「三通(通信・通航・通商)」を実現させたのです。

これにより、台湾経済の中国依存が強まったといえます。中国共産党特異の美辞麗句で飾っていますが、その本質は、台湾への経済的、文化的侵略です。

中国政府は、台湾に向けたミサイルを数百発以上配備しながら、「両岸関係の発展」という言葉を利用して、台湾を篭絡(ろうらく)し着々と台湾統一を進めてきたわけです。

つまり、王毅・国務院台湾事務弁公室主任の「両岸関係の後退を容認しない」という主張の本音は、例え民進党の蔡英文氏が当選したとしても、決して台湾統一を妨げることは許さないということです。

中国政府の最終的な台湾統一に関する本音は、反国家分裂法の第8条を読めばわかります。

<反国家分裂法 第8条>
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B9TqZd5_2FaCMDQ4NjU1ODctZWI4Mi00NzlmLTk3MzctZTY1MTgzNWI2Yjkw&hl=ja

「台湾独立」を掲げる分裂勢力がいかなる名目、いかなる形であれ台湾を中国から分裂させるという事実を引き起こした場合、または台湾の中国からの分裂を引き起こす可能性のある重大な事変が引き起こされた場合、または平和統一の可能性が完全に失われた場合は、国は非平和的手段やその他の必要な措置をとり、国家主権と領土保全を守らなければならない。

上述の規定に基づいて非平和的手段やその他の必要な措置を講じる場合、国務院と中央軍事委員会が決定と実施手配を行い、適時に全国人民代表大会常務委員会に報告する。

この条文によると、来年1月の総統選挙で民進党の蔡英文氏勝利をし、両岸関係の見直しを主張すると国家分裂勢力とみなし、武力行使の選択の可能性があるという事になります。
民進党は、台湾は既に主権を持つ独立国家であるというスタンスを持っていますが、今回の選挙で蔡英文氏は、どのような主張をしているのでしょうか?

国民ネットワークニュースの日本語版に二人の候補者の政策を整理してまとめた表がありました。

<国民党ネットワークニュース>

http://www.kmt.org.tw/japan/page.aspx?type=article&mnum=119&anum=7100

<両岸関係>

表には記載されていませんが、他の情報によると蔡英文氏は、「92年コンセンサス」の存在そのものを否定してます。
当選後、実際に政権に就くまでの間に積極的に中国政府と対話を求めるとしていますが具体的な事は書いていません。

<対米関係>
「台米の新しい戦略関係を樹立し、不均衡の両岸関係発展を調整する」と記載されています。
これは、外交の軸足を中国から米国に移すという意味です。対中依存度が高すぎるので、米国に比重をシフトしていくということを言っているのだと思います。
東アジアサミットにて新しい米中冷戦が始まった中、米国への軸足を移すという明確なスタンスは極めて賢明な判断だと思います。

<TIFA、TPP>
「台米経済貿易協力協定の締結とTPP参加をめぐり米国の支持に期待する。」と記載されています。
経済的にも、中国依存を脱し、米国との関係を深めるという方針を感じさせます。

以上、蔡氏の主張は、中台統一をすすめる両岸関係を見直し、台米関係を進めると主張していることがわかりました。
問題は、中国政府が蔡英文氏を「国家分裂勢力」とみなしての第8条を適用して武力を使うかどうかということです。
現時点では、はっきりした事はわかりませんが、危険性があることだけはいえると思います。
武力行使をした場合は、日本にとってもシーレーンを失うという国家的危機が訪れる事になります。
今後、警戒心を持って情報を集める必要があると思います。

一方、米国は実質的に台湾と軍事同盟の関係があり、中国の台湾侵略を牽制しています。
その根拠となっているものが「台湾関係法」です。

<台湾関係法(たいわんかんけいほう)>

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E9%96%A2%E4%BF%82%E6%B3%95

英:Taiwan Relations Act略称 TRA)は、アメリカ合衆国の法律。中華民国(台湾)に関するアメリカ合衆国としての政策の基本が定められている。事実上のアメリカ合衆国と台湾(中華民国)の軍事同盟である。(途中省略) 米国の政府と議会とも、東シナ海の軍事バランスを維持するために、自由主義陣営の一員(当時の中華民国は国民党一党独裁で、反共主義としての自由主義陣営)としての中華民国(台湾)をその後も防衛する必要は感じており、また中華民国政府(民主党とほぼ唯一のパイプであった許國雄僑務委員会顧問)や在米国台湾人(台湾独立派を含む)からの活発な働きかけもあって、台湾関係法が1979年に制定された。
アメリカ合衆国は国内法規である台湾関係法に基づき、中華民国(台湾)への武器売却などにより中華人民共和国を牽制している。

台湾関係法の条文は、李登輝の会のサイトに掲載されています。関心のある方はご参照ください。

<PDF版 台湾関係法条文>

中国は、「反国家分裂法」に基づいて台湾の統一を目剤しています。そして、米国は「台湾関係法」に基づいて、西太平洋の安定、中国の台湾への武力行使を牽制しています。

このような中で、来年1月14日に行われる台湾総統選は、その米中が衝突する可能性があるという事です。

更何故なら、東アジア情勢は、戦後かつて無いほど緊迫しているからです。

以前述べたように東アジアサミットで米国は電撃的い中国包囲網をつくりあげ、中国はをそれに反発しています。

実質的に冷戦が始まったと言っても過言ではありません。

また、日本では尖閣諸島をめぐる衝突があります。

つまり、次回の総統選は戦後最も緊迫した中で行われるわけです。

そのような中で、私たち日本は、国家の舵取りを誤らないように米中の動きに神経を集中しなければなりません。

2012年は、日本にとってはサバイバルの年だといえます。

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