沖縄対策本部長■2012年「台湾統一危機」の中の総統選(書籍:「暴かれた中国の極秘戦略」を読んで)

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■2012年「台湾統一危機」の中の総統選

■台湾総統選の争点「対中平和協定」とは

台湾総統選挙まで残す所1ヶ月となりました。

実は、来年の台湾総統選挙は第二次大戦後、最も東アジアの平和と秩序に大きく影響を与える重要イベントなのです。

現在、現役の国民党の馬英九氏と野党民進党の蔡英文氏が均衡した戦いを繰り広げています。

以下、昨日のニュースです。

<台湾総統選、与野党互角の戦い 対中平和協定で論戦>

(共同通信 2011/12/13 18:32)
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011121301001827.html

来年1月14日の台湾総統選1 件まで1カ月。与党国民党の現職候補、馬英九総統と、最大野党民主進歩党(民進党)の候補、蔡英文主席選挙戦で互角の戦いを展開する中、国民党との協力関係を解消した親民党の候補、宋楚瑜主席も出馬し、3人が争う構図となっている。

中国との平和協定について10年以内に交渉、締結する可能性を示唆した馬総統と、批判する蔡主席との論争で、支持率が大きく変動し、最後まで中国との距離の取り方が勝敗を決める鍵の一つとなりそうだ。(台北共同)

このニュースに書かれているように選挙の最大の争点は「対中平和協定」です。

では、この平和協定とはどのようなものなのでしょうか?

ニュースなどでは「数十年続いてきた中国共産党と国民党の内戦状態を正式に終結させる条約」と説明されています。しかし、協定の詳細について説明しているニュース記事を見るけることはできませんでした。

実は、この平和統一という厚化粧された言葉の真実の目的を詳細に暴露している書籍があります。

亡命中国人作家 袁紅冰氏が入手した三つの機密文書を元に命がけで執筆した「暴かれた中国の極秘戦略」という書籍です。

Amazon.co.jp: 暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…? : 袁 紅冰, 黄 牛: 本

この書籍で解説されているのは、中国共産党の最高機密の台湾に対する3つの戦略文書です。

『台湾問題解決のための政治戦略』

『台湾に対する軍事闘争の準備に関する対応マニュアル』

『台湾統一の政治法律処置対応マニュアル』

この機密戦略文書は、2008年、台湾の総統選挙の結果がでていない段階で、国民党の政権奪還を前提に胡錦濤が命じて作成させました。

馬英九が総統に就任した翌月の2008年6月、中国共産党は政治局拡大会議を招集し、会場を機密保持のため北京西山洞窟の奥にある中央軍事委員会第一戦略指揮センターに設定しました。そこに党の高級幹部わずか200名が参加しこの機密戦略文書が通過したのです。

つまり、中国共産党員といえどもこの文書の内容は知らされていないということです。

その内容が暴露され、日本語に訳されたのがこの書籍なのです。

■鄧小平の遺言「台湾統一は2012年を超えてはならない」

この書籍に中国共産党の工作の恐るべき手練手管の工作を詳細に記述されています。また、中国共産党の台湾統一への尋常ならざる情熱も見えてきます。

そもそも、台湾統一への情熱の原点は、鄧小平の遺言にあったのです。そして、その遺言には期限まで記されています。「2012年を超えてはならない」と記されているのです。

以下、鄧小平の遺言の部分の抜粋を掲載いたします。

<鄧小平の台湾統一の遺言(「暴かれた中国の極秘戦略」P56より引用)>

「台湾問題は、すでに我々と国民党との間の歴史的恩讐を遙かに超えた問題だということを、全党に明確に認識させるように教育しなければならない。(中略)台湾問題の解決は、中国における社会主義制度の生死存亡に関わり、共産党の生死存亡に関わる。(中略)条件を整えてできるだけ早急に台湾問題を解決しなければならない。台湾問題は胡錦濤同士の二期の任期の間に解決されなければならない。2012年を超えてはならない。我等の第18回全国代表大会が、台湾問題解決の祝賀会となる事を希望する。(中略)毛主席そして私をはじめ多くの古い同志たちは、数十年かけて台湾問題を解決するための条件を作ってきた。あとは胡錦濤同志が我々の党に代わって、収穫をするだけである」

中国共産党はこの遺言により、2012年の第18回全国代表大会までに台湾問題解決、つまり台湾の統一を果たす事が至上命題となったのです。胡錦濤は2003年の国家主席就任からこの至上命題の実現に向けて様々な手を打ってきたのです。

そして、この書籍によると、2008年に作成された機密文書『台湾問題解決のための政治戦略』には、台湾統一に向けて次のように記載しています。

<「台湾問題解決のための政治戦略」の任務(同P60~P61より引用)>

『台湾問題解決のための政治戦略』のなかで、党の新しい状況における台湾政治戦略の任務は以下のように表現される。

「全党が国民党が再度世間の座につく機会をしっかりと把握し、政治、経済、文化、社会という全面的な統一戦線工作を加速することを通じて、2012年、中国共産党第18回全国代表大会が開催される前に、戦わずして勝利し、政治的に台湾問題を解決し、祖国統一の大業を完了し、中国および海外の敵対勢力が台湾のいわゆる「民主経験」を利用して中国の社会主義制度を転覆しようとする陰謀を徹底的に粉砕しなければならない」

実際に機密文書に書かれているとおおり、馬英九が台湾総統になってきてから台湾は大きく中国よりに舵をとり、経済、文化、人の往来など中国との一体化が図られてきました。

一つ残っているのが政治・軍事的な一体化です。つまり中台統一です。その期限が2012年である事をこの文書でも決意文のような内容が記載されています。

「全党全軍は引き続き決して気を緩めること無く、軍事闘争への万全の備えをしておかねばならない」

「2012年に台湾問題を解決し、祖国の統一を実現する。これは、小平同志の遺言で確定されたものである」

「成功しなければならない物であり、失敗してはならないのである」

■「台湾問題解決のための政治戦略」の結言:(同P61より引用)

「台湾問題解決のための政治戦略」は最後に、こう報告している。

「経済建設が中心という前提で、2012年、戦わずして勝つという台湾問題解決の政治戦略の実現へ向けて、全党全軍の工作の重心を移行していくことになる。外務・内政・軍・公安・国家案全・宣伝工作は、いずれも積極的に台湾の統一戦線工作に従事しなければならない。(中略)台湾問題の解決は社会主義制度の生死存亡に関わる高レベルの問題として認識しなければならない。(中略)平和的手段を主とした統一戦線の方法で台湾問題の解決を努力して戦いとるとともに、全党全軍は引き続き決して気を緩めること無く、軍事闘争への万全の備えをしておかねばならない。2012年に台湾問題を解決し、祖国の統一を実現する。これは、小平同志の遺言で確定されたものである。我ら今期党中央が先輩プロレタリア革命家の英霊に対して行った政治的約束でもある。成功しなければならない物であり、失敗してはならないのである」

この文章の内容を読むと、来年が台湾にとって運命の年であり、日本にとっても運命の年であることを感じます。

■平和協定とはどっちに転んでも台湾を統一する中国共産党の罠

更に、軍事闘争についても総統選の結果を踏まえて三つのオプションを詳しく記載しています。

選挙の勝敗でシナリオをわけていますが、結局、実際は選挙の勝敗は関係なく、平和協定を受け入れれば、武力を使わずに統一し、それ以外は電撃的な武力統一を断行するというシナリオになっています。

では受け入れた方が良いではないかと思うのですが、この書籍によると平和協定の内容は次のようになっています。

(1)中華人民共和国を中央政府として承認

(2)中華民国の憲法の廃止

(3)国号、国旗を廃止定

つまり、事実上、台湾の無血降伏という内容です。

また、この書籍によると2016年までには、国民党を消滅させ、台湾社会民主党を設立し与党に据えるという計画になっています。

この計画によると、どちらに転んでも2012年の秋に開催される中国共産党第18回全国代表大会までに台湾の統一を完成させる計画になっています。

<2012年、台湾の武力統一、三つのシナリオ(同P206~P207より引用)>

台湾問題を統一戦線方式で解決することを画定すると同時に、胡錦濤は軍に「台湾に対する軍事闘争の準備に関する対応マニュアル」(以下「対応マニュアル」と記載)を策定させた。胡錦濤のこうしたやり方は、主戦派の反対意見を静める必要があったからだけではなく、さらに清国な政治陰謀を含んでいる。この『対応マニュアル』は、すでに中国共産党の『台湾問題解決のめの政治戦略』の付帯文書となっている。

この『対応マニュアル』では、

「全軍の各実戦部隊は万に一つの過ちもない充分な準備を心がけ『先陣を任せれれば、必ず勝利する』という誓約を実践に移す。(中略)党中央、党中央軍事委員会の号令の一下、人民解放軍は、強大な戦力で敵を打ち破り勝利し、一挙に台湾を解放する。」

と謳われている。

『対応マニュアル』は、人民解放軍の台湾作戦に対する基本戦略を即決戦とし、核兵器以外のすべての作戦能力を動員し、うさぎといえども全力で飛びかかる猛虎の気迫で7日から10日以内に台湾の軍事目標に対する破壊的な打撃を完了する。それとともに空中機動作戦及び海上輸送を連合させた方式で、台湾の各戦略目標に対する占領を実施する。

『対応マニュアル』は、『台湾問題解決のための政治戦略』に基づき、統一戦線方式を主として台湾問題を解決するという全体方式のもとで、具体的に幾種類かの台湾に対する軍事占領を実施する状況を提示している。ここでいくつかの状況を列挙してみたい。

◎武力統一ケース1:

2012年、国民党が総統選で敗退した場合

2012年、国民党が総統選で敗退した場合。選挙結果の公布後、新たに当選したニセ総統が就任する前の段階で侵攻を発動する。この段階では、台湾の権力移行が完了しておらず、我軍が一挙に襲撃するのに有利である。それとは別に、国民党政府がこの時点では、まだ行政権力の資源を把握している。選挙に負けた状況のもとで、国民党が権力を我々に私、民進党に渡さないという可能性もきわめて大きい。それゆえ国民党が掌握している権力を利用して我が軍の台湾解放に協力する可能性も極めて高い。」

◎武力統一ケース2:

2012年、国民党が総統選で勝利した後、平和統一合意書の締結を拒絶した場合

2012年、国民党が選挙に勝利した後、約束を反故にして、我が党の『台湾問題解決のための政治戦略』で規定している方針に基づき中華人民共和国を中央政府として承認し、中華民国の憲法、国号、国旗を廃止する平和統一合意書の締結を拒絶した場合。この種の状況が発生した場合は、国民党が自ら平和統一の大きな門戸を閉じたことを物語っている。軍事闘争により台湾問題を解決することが歴史の必然的要求となる。

◎武力統一ケース3:

2012年、国民党が選挙に勝利たのち、我が党と平和統一合意の締結の過程において、民進党が大規模な抗議活動を発動して社会的混乱を作り出し、合意の締結を脅かすに至った場合。

これは台湾島内に国家分裂の重大な事変を導き出す可能性が現れたことを物語っている。こうした状況において、我が軍は、『反国家分裂法』に基づきすみやかに出動し、一挙に台湾を占拠し、動乱を平定する。国民党が公的に中央政府に軍隊覇権・秩序維持を要請するという状況を勝ち取れば、政治的効果はさらによい。

胡錦濤は、今でも外交では平和的な表現を使っていますが、裏では武力崇拝者であるとこの書籍の著者は述べています。

それを表す表現を掲載しました。

<武力崇拝者の胡錦濤(同P205より引用)>

胡錦濤は馬英九のように「不武(武力を使わない)」などというたわごとを口にする事はなく、以前として武力崇拝者である。2008年6月、党政治局拡大会議の席上、胡錦濤はこの点について以下のようにはっきり表明している。

「我々が客観的な情勢を根拠に統一戦線方式を主として台湾問題を解決することを画定した事は、軍事闘争の備えを取り消したわけではない。全く反対であり、平和的に台湾問題を解決しようとすればするほど、軍事闘争の準備を徹底させねばならない。我々は種に我々の強大な経済力、政治力によって統一戦線の方式で充分に戦略の目的を達成する能力をもっている。特別なのは軍事力であって、強大な軍事力および十分な軍事闘争のそなえという後ろ盾がなければ平和的統一の成功は不可能である。全党、全軍はこのことをはっきりと認識すべきである。『戦わずして人の兵を屈する』ことが最高戦略である。しかし、戦わずして相手を降伏させることのできる兵力とは、向かうところ敵なしの戦力を基礎とするのである」

以上、書籍「暴かれた中国の極秘戦略」を読んで台湾の危機的状態を考えて見ました。

一方、2010年は米軍は、トモダチ作戦、東アジアサミットでのアジア回帰を行い、中国包囲網を作りました。

この動きの裏には、中国共産党の2012年の台湾統一の動きを防ぐ意味があったのではないかと思います。

このシナリオは、多くの変動要因があり、結局、中国、台湾だけでなく、日本、米国がどう動くかで決まってきます。

特に重要なのは、日本でもなく、米国でもなく、日米同盟だと思います。米国のスタンスは決まっているので、最も大きな変動要因は「日本」である事は間違いないと思います。

今ほど、日米同盟が重要な時はありませんが、中国にとっては今ほど、日米同盟が邪魔なときはありませんので、沖縄を拠点にして日米の亀裂を入れる工作をいれてくると思います。

そういう意味で、沖縄は台湾統一のための裏側での様々な工作が蠢いて当然という事がわかったと思います。

(仲村覚)