寄稿論文■夕刊フジ連載(3)沖縄の「属国化」を見据える中国

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琉球独立運動

 2010年9月の尖閣沖中国漁船衝突事件直後から、中国メディアは「沖縄(琉球)は中国の属国だった」「日本には琉球の主権がない」「琉球人民は沖縄返還以降、反米・反日の独立運動を休むことなく続けている」といった、記事や論文を流していた。

 私は当時、「何をバカな」と一笑に付していた。沖縄にも琉球独立を主張する政党はあるが、県知事選に候補者を擁立しても得票率1%に満たないなど、まったく話にならなかったからだ。

 ところが、今年5月15日、状況は変わった。沖縄で「琉球民族独立総合研究学会」が設立され、地元メディアが大きな紙面を割いて、「琉球民族に自由を」などと、それを肯定的に報じたのである。

 中国共産党の機関紙、人民日報の国際版「環球時報」は翌16日、「中国の民衆は支持すべきだ」とする社説を掲載した。中国の各テレビ局も「沖縄では琉球独立旋風が起きている」などと、独立学会のインタビューや、反米集会の映像を組み合わせて報道した。

 まるで、事前に連携していたかのような、素早い反応である。

 独立学会は「日本からの独立」を前提として設立されている。一体どのように独立を実現させるつもりなのか。 

 同学会の中心的存在である龍谷大学の松島泰勝教授が10月1日、東京の明治大学で「もはや琉球独立論しか選択肢はないのか」というテーマで講演をした。

 その中で、琉球独立を急ぐ理由について、「日本は、沖縄を捨て石にして、尖閣で戦争をしようとしている。琉球を戦場にしないために急いで独立する必要がある。琉球を国連の非自治地域(植民地)に登録すれば日米が尖閣で武力行使できなくなる」と語った。

 実現方法は、①県議会で、国連の非自治地域リストへの登録を認める決議をする②国連で、琉球を「非自治地域」に認定し、日本の植民地であると国際的に認める③独立の是非を問う住民投票を行う④投票結果によって、独立が国連で承認される|という。

 ただ、沖縄県議も「琉球独立」には抵抗があるため、次のような説得方法を考えていた。

 「非自治地域認定されると、沖縄単独で『オスプレイ撤去』や『米軍基地撤去』といった交渉を、米国と直接交渉することができる」
 「実際に独立しなくても、決議するだけでも基地交渉などを有利に運ぶことができる」

 いかにも、冲縄の政治家がコロッと傾きそうで、ゾーッとした。

 それにしても、「日本は尖閣で戦争をしようとしている」という主張には納得できない。尖閣は日本固有の領土であり、海上自衛隊護衛艦に火器管制レーダーを照射するなど、軍事的挑発を仕掛けてきているのは中国である。

 中国は、沖縄属国化を見据えて、独立運動を支持しているとしか思えない。沖縄県民、沖縄県議の方々に言いたい。沖縄をチベットやウイグルのようにしていいのか。